書名も版元もわかりません。

 お客さんの本捜しに付き合う時、何も手がかりがない場合が多い。
書名、版元はおろか著者、内容もあいまいな本までめんどう見なくてはならない。
お客さんもあせって気がせいているし、こちらも訳がわからなくなっている状態だと、まず見つかることはない。
ただおろおろするばかり。

 そんなときは時間が無くても、とりあえず落ち着いてひとつひとつ手がかりをいっしょに捜す。どこで聞いたとか、テレビでやってたとか、誰々から聞いたとか。
いっしょに苦労して捜すだけでも、お客さんの満足度は高い。
ここまでしてくれた、という思いが大切だと思う。

 気持ちよく笑顔で話を聞いただけでも、けっこう感謝される。適当にあしらうとお互い不快になる。気持ちよい状態になれば、たとえ捜していた本がなくても、似たようなものや他のものを買っていってくれる。
「無いです。」「品切れです。」だけではやっぱり寂しいよ。

 結局、書店ってサービス業なんだな。最近は特に本を売ることより、サービスの方が求められているような気がする。。