自由なお年寄り

ボケ老人の孤独な散歩 (新潮文庫)

 配達で車を転がしていると、春先天候のよいお日柄には、お年寄りが大勢散歩している姿に出くわす。
 しかし暖かくなるとついつい、道路の真ん中を堂々と歩き出す強者もいる。
 悪意では無いのだろうけれど、交通の障害になって車が数珠繋ぎになることもしばしばだ。
ある意味、自由で羨ましい。




 考えてみると、いつの間にか車が交通の主役になって歩行者は脇に追いやられている。 車に乗ると歩行者や自転車が疎ましく、歩行者になると車が邪魔に感じる。
 立場立場でガラリと変わる。人間は勝手だ。



 きっと自分が年寄りになったとき、また今とは違った視点で物事を考えるようになると思うと、呆けて道の真ん中を歩くお年寄りを無下にはできないなと思ったりする。